本格的な画面構成を目指す人には油絵をお勧めします。油絵の具の特徴は遅乾性を利用して、塗り重ねの連続から立体感のある陰影表現が可能になると言うことです。ただし最初から高度なテクニックを磨く必要はないので、まずは抽象画などの単純な構造の絵画を模写していきましょう。ようするにモンドリアンのように四角形を組み合わせただけの単純な模様やタッチを実際に模写すると、油絵の具の性質がよく分かりますし例えばゴッホの絵に出てくる草や花など絵全体でなくともピンポイントで描くだけで、ゴッホと言う画家がどの様な力加減で筆を動かしたのか頭でなく肌で感じ取る事ができます。ピカソでもマチスでも単純な構造の絵画は山のようにありますので、自分がこれなら描けそうだと思う絵を1枚でいいので探してみましょう。

油絵の具は水ではなくオイルを使うことから、難しいと思われがちですが、オイルは光沢を出したり絵の具を乾きやすくするためのモノなので、水だと思って使えば大丈夫です。オイルにもたくさん種類がありますが、基本的には「ペンティングオイル」というものを準備すればいいので、難しく考える必要はありません。ただ油絵の具で実際に何かを描く前にスケッチブックにこれから描こうとする造型を鉛筆で描いてみて、感覚を掴んでおく事が重要です。例えば写実的な描写がどうしてもできないとか、鮮やかな画面を作る事ができないと言った悩みもあるかもしれません。しかしスケッチも併用しながら、ゆっくりでいいので何かを描くことによって、インスピレーションが生まれるので、まずは一番小さな0号というキャンバスを用いて、丸や三角などの図形を描写するだけでも、油絵がどのようなモノであるか体感する事が重要です。

ただ油絵と言うものは様々な表現に対応できるので、水彩のようにぼかすこともできれば、クレヨンのようなざらついた画面を作り出すこともできますから、こどもでも自由に挑戦できるジャンルと言えます。レオナルド・ダ・ビンチのような高度な立体感の創造をイメージする人もいますが、単純に黒の絵の具で落書きをしても何ら問題はないのです。基本はスケッチではありますが、絵は自由がいのちだという考えを尊重すると、基礎も何もない状態でもストイックに自分の考えていることを自由に書き連ねていくとストレス発散になりますし、本人が楽しければこれほど幸せな事はありません。そうやってずっと描いているうちに、表現に対する思想と言うものが高まりますので、まずは続けることを意識して取り組んでみましょう。

また最初は何となく始めた油絵が思いの他楽しくなって、のめり込んでいくという人もいて、そういう時には実践的な訓練をするとよりスキルが上がるので、まずは机の上に何でも好きなものを置いて、それを細かく描写していきましょう。最初は形がくずれたり、色をうまく出せなかったりして翻弄する事もありますが、慣れれば感覚を掴むことができますし、油絵の描き方というレクチャー形式のテキストを用いるのも効果的といえます。ただスキルがある程度のレベルに達するとマンネリズムに陥る事があるので、油絵にのめり込み過ぎた時には、2~3週間ほど一切絵に関わらない時間を作る事も必要です。ある種の空白期間を作ることによって、過剰な絵に対する意識を静めて、客観的な視点を取り戻すことができるので、お勧めです。

もしくは外で油絵を描く事も脳をリフレッシュするという点では効果的です。自然の中でそこにあるものを描写することによって、油絵に対する表現力の可能性を高めるだけでなく、写実的な技術の構築にかかせない光と影を直接確認できます。