人間を具体的に描きたいと思ってモデルをスケッチしたとしても、筋肉のつき方や、膝や肘の骨格を意識していないと体のラインがゆがんでしまったり、痩せている人を骨太にしてしまったりと、不都合が生じてくるので、まずは人体図鑑を用いて筋肉と骨格の造型を模写してみましょう。人間の体系と言うのは骨格と筋肉で決まってくるので、まずは基礎的な構造を理解することが重要です。筋肉がどのように骨を覆っているのか顔も胴体も含めて観察していく必要があります。

人体の皮を剥ぎ取った状態の図を参考にするといいので、重要な筋肉の部位として顔であれば表情を決定付ける頬の周囲の口輪筋、胴体であれば胸・腹部・下腹部を構成する大胸筋・腹直筋があります。そして骨と筋肉の集合体のうち最も重要なのが、腕と足でこれらは筋肉の体積が占める割合が多くなっているので、肩の三角筋から上腕二頭筋、内側のとう則手根屈筋、足のももを構成している大腿四頭筋からスネの誹腹筋と長指伸筋をを丹念に調べる必要があります。ただ男性と女性では骨格の一部に相違がありますし、胸やお尻の筋肉のつき方が異なってくるので、男女別の人体図が必要になります。

そして体の内側を理解できたら、鏡を用いて自分の顔を見ながら、鼻と頬を指でなぞってみてください。鼻はつるつるしていますが、頬はざらついていることから鼻は頬に比べて光を反射しやすいということが分かります。そして手のひらを見ると指先は指紋がありますが指の付け根から手首にかけて無数の線で刻まれています。腕の内側と外側でも外側の方がかさついているので光を反射しにくいという特徴があり、普段気づかない発見が多くあります。

自分の体をよく観察してスケッチすることを心がけましょう。骨格と筋肉の構造、体の表面の性質を総合的に理解できれば、モデルをデッサンした時に体のラインをすっきりと描けますので、たとえ抽象画を描く立場にあっても肖像画を描くのであれば、人体の構造を具体的に把握しておく必要があります。

ただ人間は走る事もできれば、泳いだり、木に登ったり、ありとあらゆる動作をしますので、様々な角度から人体を観察する訓練も必要になってきます。人間は腕を伸ばしたり、膝を曲げたりして初めてドラマチックな空間を演出できるので、デッサン用の人形や人体ポーズ集を用いて、丹念にスケッチしていきましょう。そうすればラフスケッチで直感的なイメージを紙に残したい時など、あらゆる角度とポーズに対応することができます。

人物画で最も重要なのは顔です。そして顔の表情をつくるためには頬の筋肉を調整して、表情を作っていく必要があるので、喜びを表現する時は連動する目、鼻、口を調整する必要がありますし、怒りを表現する時は眉毛の角度と目を細めにしなければならないので、体のポーズと同じように顔の表情に関しても鏡を見て、研究しましょう。

また人間は洋服を着ているので、例えば着物であれば、腕も足もすっぽり隠れますが、薄い生地だと体のラインがくっきりと出ますし、厚い生地だと肉付きを判断しにくくなるなど、様々な衣装をスケッチしなければなりません。そこでファッション雑誌を一冊用意して、丹念に写し取りましょう。ファッション雑誌には靴や帽子、カバン、時計など人が日ごろ身につけるものがたくさん載っていますので、参考になります。ただ人間は地球上で生きているわけですから、どこで何をしているのかということも考えなければなりませんので、椅子に座っていたり、自転車に乗っていたりと様々な状況に対応する必要がありますので人でも景色でも、多くのスケッチをする習慣をつけるようにしましょう。