Categoryarchive

自分らしさを出したいなら世の中に存在するもの全てスケッチする

絵を描き続けるうちに自分の個性を際立たせたいと思うのは自然な流れであって、絵を描く事事態がマンネリ化してくると情熱が薄れて、気力がなくなってしまいます。そこで自然や建築物、人間、動物にいたる世の中のありとあらゆるものをスケッチしてテリトリーを広げましょう。一見ありとあらゆるものと聞くと、地球上の群像を網羅する事は難しいのではないかと思うかもしれませんが、今はインターネットがあるので家にいながら自由に想像したものを調べる事ができますので、まずは身近な犬や猫など自分が好きなものからスケッチを始めていけば楽しみながら描けますし、リズム感のある描写に挑む事ができます。

描きたいものが見つからなければ、自分の部屋をスケッチすることをお勧めします。普段見慣れている場所は簡単に描けると思いがちですが、遠近感を意識しなければならないので、注意深く観察していく事が重要です。意識して部屋を見渡すと、実に色々なものがありますので、全てを丹念に描写する作業と言うのは容易なことではありませんし、しんどくなってくることもあるでしょう。そんな時は描いているものに触れて質感を確かめましょう。例えば車は固いものであると思っていても実際手で触れてみると、簡単にへこむことが分かりますし、プラスチックは軽くても固いので固定概念を取り払って、積極的に物体の質感を確認すれば、リアルな描写に対する苦手意識はなくなっていきます。

インターネットで画像検索すれば描きたいと思う目的の対象物はすぐに確認できますが、いわゆる現場の雰囲気を味わうことも絵を描く上では大きな訓練になると言えますので、外に出て自然の景色を自分の目で直接確かめながらスケッチしてみましょう。ただ自然がない所に住んでいるのであれば、家やビルを描いても問題はありませんし、ライブ感覚の中で対象物を描写する事は物体を感覚として捕らえていく事ができるので、絵に取り組む姿勢も違ってきます。例えリアルな構図を再現できなくてもできる範囲で大丈夫なので、まずは自分が描けそうなものを見つけるところから始めてみましょう。

また動物園は野生と違い動物たちが動き回らないでいることが多いので、スケッチするのに格好の材料と言えますし、一度に様々な生き物を生で確認できることも非常に価値のある体験と言えます。それは喫茶店のように人が集まりやすい場所にも共通した事が言えますので人物のスケッチにも挑戦する事ができます。そう言った訓練を重ねていけば自ずと出掛ける時にスケッチブックを携帯するようになりますので、様々なものを生で見ながら構成を組み立てると言う訓練にもなります。そういった行動が日常的になってくると、普段経験する事のない瞬間的な出来事に遭遇した時でもそれを脳裏に焼き付けて、後からでも絵に描き起こす作業が可能になってきます。

要するにスケッチの積み重ねは観察眼を活発化させる訓練とも言えるため、脳の中で見たものを形にしていく作業が繰り返されれば、過去の記憶すらも1つの画像として見る事ができるので、それを絵で表現していくという高度な技術に繋がります。ですから絵にしたいと思う1つの対象物をできるだけ色々な場所から観察することが重要です。多面的な視覚を養いながら着実に1つの構図を完成させる事ができますので、それが自然であっても人間であっても、光と影の関係性や物質の本質が分かってくると、しぜんに指先が反応して細かい描写にも挑む事ができます。

まずはライブ感覚を体に染み混ませて、それを再現する取り組みを実践してみましょう。そすれば想像で様々なものを描けるようになりますのでお勧めです。

風景画と肖像画を組み合わせたいなら人物は背を向けるのがベスト

風景画の中に人物を溶け込ませて、心象風景を作り出す技法について多くの画家が四苦八苦してきましたが、これは何もプロでなくても自由に挑むべきジャンルと言えます。しかし風景をベースに描く以上、人は背を向けておくのがベストと言えます。ただ人も風景も丁寧に描きましょう。例えば山があって手前に人が立っていれば、山を見上げる人という空間が生まれます。そして、人の隣に花を描くと、情緒が生まれますし風に吹かれて花びらが舞っていると、さらに緊迫感が出てきます。このように心理状態を植物で表現する事ができるので、様々な情景の中に人を置いて試してみましょう。

それではなぜ風景の中の人は背を向けるのがいいのでしょうか。それは表情を隠すことによって風景を際立たせて心理状態を明確にするためです。人の表情と言うのは喜怒哀楽がはっきりしているので、そのまま描くとすぐに何を考えているか分かってしまいますし部分的なものになりがちです。ですから、あえて表情を見せない状態にしておいて、風景の一部にアクションを起こすと、一つ一つの要素が総合的にリンクして画面全体が沸き立ちます。

もしくは人が山を見上げている絵を描いた時に、山から煙が出ているとそれは噴火を思わせる情景に変わるため、そこにいる人の安全が脅かされるのではないかという危機感が生まれますし、逆に美しい色合いの山を描けば、心が穏やかになって、そこにいる人が羨ましくなります。要するに絵の中に心が入っていくと言う1つの演出になるので、リアルな画面を作ればそれだけ臨場感が増して、映像を超える印象が解き放たれます。

演出という意味では、舞台などのストーリー作りと何ら変わる事はなく、美術オンリーで空間の調和を図っていき、風景が物を言う状態にすれば、より精神的な構造を浮き彫りにする事ができるので効果的です。ですから人が2~3人いるとさらに、人間関係の中で感情がうごめく様を演出できるので試してみましょう。これらの効果は風景が物語るお話であると考えれば分かりやすくなります。1人が画面の端から2人の男女を見つめていて、黒い雲が流れていると、妬みというような恐ろしい雰囲気になるのですが、2人の男女が1人を見つめていて、空が晴れ渡っていれば、微笑ましい気持ちになります。

演出はちょっとした発想の転換で、形になっていくので、心象風景を描きたいと思ったら起承転結の「起」と「結」を意識して、日の出を人が見ているだけの絵を考えた時に、太陽が「起」となり人の心が希望と言う「結」へと導かれるため、一見抽象的な演出に見えても具体的に心に呼びかけるような形にすれば、分かりやすくなります。これらの理論を独自の思考に組み入れるためにも、絵本などの単純なストーリーを成す物語は非常に分かりやすく心に訴えかけてくるので、「起」と「結」を織り成す考えを単純化することができます。それではなぜ絵には起承転結の「起」と「結」だけを取り入れるといいのか考えて見たいと思います。

もし本当のストーリーを絵で表現すると、一枚の絵では「承」と「転」を表現しきれないので、4コマまんがにしないと完全なストーリーは完成しません。ですから事の顛末を一度に表現する場合には「起」と「結」だけで事足りてしまうのです。ただ余韻を残したり、絵の表現形態を「?」で終結させたい時には「起承」だけでも大丈夫です。「転結」の部分は想像力が補ってくれますので、絵というのは人に表情を与えなくても、周りの風景をいじれば全体を物語る一種の表情を演出できるので、隅々までしっかりと描写していく必要がありますし、写実的であれば尚良くなります。

基礎から中級にステップ発進!桜を綺麗に描く方法は忍耐あるのみ

絵の基礎は脳内のイマジネーションからそれが指先に伝わり、紙面上に再現できるか、もしくは目の前にあるものをある程度忠実に表現できるかということから始まりますが、そこで終わるのではなく思考意識をさらに発展させて忍耐を身に付けつつ細密表現にチャレンジしてみましょう。ようするに抽象画であれば脳内訓練だけで自己の世界を広げていく事ができますが、具体的な風景画や肖像画を考える時にたとえ大胆な荒削りのタッチでも部分的には、忍耐強く細密描写を施す必要がありますので、桜を描くのであれば花一輪を粒の様なイメージで捉えてじっくりと取り組んでいかなければなりません。

それではベタ塗りで構成されている単調な絵は関係ないのかという問題がありますが、ベタ塗りほど細密的な作業はないので、むしろより気を遣っていかなければ美しい均一色の画面は完成しません。そもそも背景をベタ塗りにして手前に人物を描いた時などはとくに注意が必要で、重なりを完璧に表現するためには人物と背景の境目に隙間ができたり、背景の色が人物のラインにはみ出てしまったりすると、人物の形状を損ねるだけでなく、全体の印象が悪くなってしまうので細い筆でゆっくり丁寧に着色を施さなければなりません。

人間の細胞が粒子(原子)で構成されているように絵の画面も非常に緻密な点や線の重なりが基礎となって形作られるため、忍耐がなければならないという理屈は、何を描くときでも共通の理念として生き続けていますので、前衛的な造形美術でも微調整なしには、決して完成に至らないことを前提に考えつつ入念な下準備をすることが重要ですし、建築の設計図のようにスケッチの段階からきめ細かい点や線が存在していなければなりません。

ただ一言で忍耐と言ってもどうやって身に着けていけばいいのか分からないと思いますので、まずは一本の木を覆い尽くす葉を1枚1枚丁寧に描いてみましょう。それは時間がかかる作業ですし、途中で投げ出したくなる思いが生まれるかもしれません。しかしその木に生い茂る葉がいかに生命力に溢れているかを追い求める時にこそ、気力が手に宿りますし、どれだけ時間をかけてもかまいませんので、最後まで描き上げる努力をしましょう。

そして自由表現も的確なイメージングを再現するために細かく丁寧な線を引いていくことを意識していきましょう。なぐり書きのようにすることも必要なときはありますが、訓練の一環として一枚でもいいのでリズム感を持ちながらゆっくり、なめらかな風合いを出せるような画面作りをしてみましょう。

例えばアクリル絵の具を使って、画面を黒で塗りつぶして小さな白い点を配置して銀河を描く事ができます。銀河は星の集合体と言うだけではなく、赤や青のしみのような陰影が存在することから、初級から中級にステップアップするには適切な課題と言えます。また細筆で丹念に白い点を打っていかなければならないので、非常に根気の要る作業です。そして問題のしみをどのように表現するかですが、これは赤や青の絵の具に水を多めに混ぜて、十分薄めてから平筆で点を打つようにして、ゆっくり星の上に塗り重ねていきます。そしてしみができたら、再度その上からさらに小さな白い点を打っていけば奥行きのある宇宙空間が完成するというわけです。

では抽象画はどのように発展させていったらいいのでしょうか。初歩的な訓練としては、自由に描くことで感覚を養えるのですが、まずは一度完成した絵に何かを付け足したり削除してルックスを変えると言う作業を施してみてください。脳を柔軟な状態にして、どうすれば1枚の絵に化学反応を引き起こせるか実践してみましょう。

人間をしっかり描きたい!人体図鑑を模写して構造を理解しよう

人間を具体的に描きたいと思ってモデルをスケッチしたとしても、筋肉のつき方や、膝や肘の骨格を意識していないと体のラインがゆがんでしまったり、痩せている人を骨太にしてしまったりと、不都合が生じてくるので、まずは人体図鑑を用いて筋肉と骨格の造型を模写してみましょう。人間の体系と言うのは骨格と筋肉で決まってくるので、まずは基礎的な構造を理解することが重要です。筋肉がどのように骨を覆っているのか顔も胴体も含めて観察していく必要があります。

人体の皮を剥ぎ取った状態の図を参考にするといいので、重要な筋肉の部位として顔であれば表情を決定付ける頬の周囲の口輪筋、胴体であれば胸・腹部・下腹部を構成する大胸筋・腹直筋があります。そして骨と筋肉の集合体のうち最も重要なのが、腕と足でこれらは筋肉の体積が占める割合が多くなっているので、肩の三角筋から上腕二頭筋、内側のとう則手根屈筋、足のももを構成している大腿四頭筋からスネの誹腹筋と長指伸筋をを丹念に調べる必要があります。ただ男性と女性では骨格の一部に相違がありますし、胸やお尻の筋肉のつき方が異なってくるので、男女別の人体図が必要になります。

そして体の内側を理解できたら、鏡を用いて自分の顔を見ながら、鼻と頬を指でなぞってみてください。鼻はつるつるしていますが、頬はざらついていることから鼻は頬に比べて光を反射しやすいということが分かります。そして手のひらを見ると指先は指紋がありますが指の付け根から手首にかけて無数の線で刻まれています。腕の内側と外側でも外側の方がかさついているので光を反射しにくいという特徴があり、普段気づかない発見が多くあります。

自分の体をよく観察してスケッチすることを心がけましょう。骨格と筋肉の構造、体の表面の性質を総合的に理解できれば、モデルをデッサンした時に体のラインをすっきりと描けますので、たとえ抽象画を描く立場にあっても肖像画を描くのであれば、人体の構造を具体的に把握しておく必要があります。

ただ人間は走る事もできれば、泳いだり、木に登ったり、ありとあらゆる動作をしますので、様々な角度から人体を観察する訓練も必要になってきます。人間は腕を伸ばしたり、膝を曲げたりして初めてドラマチックな空間を演出できるので、デッサン用の人形や人体ポーズ集を用いて、丹念にスケッチしていきましょう。そうすればラフスケッチで直感的なイメージを紙に残したい時など、あらゆる角度とポーズに対応することができます。

人物画で最も重要なのは顔です。そして顔の表情をつくるためには頬の筋肉を調整して、表情を作っていく必要があるので、喜びを表現する時は連動する目、鼻、口を調整する必要がありますし、怒りを表現する時は眉毛の角度と目を細めにしなければならないので、体のポーズと同じように顔の表情に関しても鏡を見て、研究しましょう。

また人間は洋服を着ているので、例えば着物であれば、腕も足もすっぽり隠れますが、薄い生地だと体のラインがくっきりと出ますし、厚い生地だと肉付きを判断しにくくなるなど、様々な衣装をスケッチしなければなりません。そこでファッション雑誌を一冊用意して、丹念に写し取りましょう。ファッション雑誌には靴や帽子、カバン、時計など人が日ごろ身につけるものがたくさん載っていますので、参考になります。ただ人間は地球上で生きているわけですから、どこで何をしているのかということも考えなければなりませんので、椅子に座っていたり、自転車に乗っていたりと様々な状況に対応する必要がありますので人でも景色でも、多くのスケッチをする習慣をつけるようにしましょう。

人の輪郭を描くだけでOK!光と影のコントラストは赤と黒で再現

絵の世界におけるある種のドキュメンタリーというのは、写真以上の臨場感を持つ時に重みが増していきますが、人の形の輪郭線を描いて黒い絵の具で塗りつぶし、それ以外の背景を赤で塗りつぶすと夕焼けの景色に人がたたずむ画面を作り出すことができるので、誰でも挑戦できます。これは単に光と影のみの競演に過ぎませんが、黒と赤を用いる夕焼けのイメージは、人でなくても象やキリンの黒の塗りつぶしを前面に置いて背景を赤にすれば、野生動物の群像を再現できますし、桜や松、梅などの樹木であっても日本の風情ある雰囲気がリアルに描写されます。

赤と黒のコントラストと言うのは、非常にシンプルですが実に多様性のある活用術を見出すことができるので、上記の人と夕焼けの画面の手前に緑色の絵の具で草を描いてみると、さらに遠近感を演出できるという応用に発展していきますので、1つの手法としていつでも使う事ができます。この時、にじみ易い水彩絵の具よりもアクリル絵の具を用いることをお勧めします。

アクリル絵の具はベタ塗りをするのに、適している画材で、はっきりとした色合いを出せることから、赤のベタ塗りの背景に黄色い円を描けば、沈み行く太陽を演出できるので、人と夕焼けのコントラストにそれを描き加える事も可能です。また赤い塗りつぶしの画面に黄色い円で太陽を表現したら、その下にオレンジの線を引いて線から下を再度オレンジで塗りつぶしてみましょう。すると夕方の海を再現できます。さらに手前に人の影と草を加えれば、より印象を際立たせる事ができます。

これらの技法を様々な対象物を用いて発展させていくうちに、色の効果について実践するべき事は何であるのか見極める事ができるようになってきます。まず孤色という相性の良い2色の色をコントラストとして用いることによって、絵の印象や美しさがより際立つので、黒と赤でもいいのですが、黒の相対色は白なので、黒い画面に白い小さな点をいくつか描くことによって色の相互の強弱が最大になり、宇宙を描く時には効果的ですし、黒と白というのは全ての色の中で最も強烈な相対性を発揮することから独特の画面を作る事ができます。緑色の葉に赤い花を添えることも同じように弧色の効果で、美しい造型が完成します。要するに色相環というものを考えた時に、赤⇒オレンジ⇒黄色⇒黄緑⇒緑⇒水色⇒青⇒紫⇒ピンクという順に色を配置していくと1つの円になって、ピンクは赤に移行していきます。

この円の真逆、いわゆる円の中心に対して対照地点にある色をそれぞれ弧色というわけですが、ゴッホはこれらの性質を存分に自分の絵に活用したので、鮮やかで美しい画面を作ることに成功しました。ですから弧色を意識しながら着色作業をすれば、印象も強まり色彩の強弱をよりたかめながらドラマチックな造形美が誕生するので、実践してみましょう。

アクリル絵の具は油絵の具に匹敵する力強い画面を作るのに適したツールですが、水に溶いて使う事ができるので便利です。ただ油絵の具に比べると、すぐに絵の具が乾いてしまうため、短時間で仕上げないと、色の塗り重ねができなくなったりオイルを使わないので、つやを出せないと言う難点はあります。

しかし色のコントラストは色鉛筆やクレヨンでも再現できるので、その場合は細かく丁寧な着色を施していくことが重要です。まずは何でもいいので輪郭線を綺麗に描く練習から始めましょう。輪郭線を細かく描ければ、よりリアルになりドラマチックな演出を際立たせる事ができるので、コントラストの効果が増します。ですから1枚描いて終わりというのではなくたくさん描いて技量を身につけていきましょう。

消しゴムなしで即実践!1日1枚想像したことを鉛筆で描いてみる

どうすれば人を感動させられる絵が描けるのかという回答を見出すために行うことがあります。それは1日1枚想像でいいので自由に思いついたことを絵にしてみると後からその絵を見た時に自分の技量や表現力に対して不足している要素が何であるのか順を追って確認する事ができます。ただし消しゴムを使わないで、一気に書き上げると言うのが前提にあり、場合によっては集中力と体力がないと描ききる事はできないので、決して簡単なことではありませんが、表現力を養うためには、瞬間的なひらめきや絵全体のボリュームとバランスを考える上で究極の選択をせまられる事もあり、それを勝ち抜けば一歩前進できるということも念頭に置いておくといいでしょう。

それをまずは1ヵ月を目標にして続けていき、1ヵ月後に必ず描いた絵全てを見直すようにします。そして反省点を見出しどこを改善するべきかを考え、結論が出たら次は3ヶ月を目標にして、毎日描いていきます。ただここで重要なのは、必ず反省を生かすということですが、日々変革を意識して描くことこそが、自由表現を極めるための課題と言えますので、しっかり積み上げていきましょう。この訓練は、自分が納得できるまで続ける必要がありますが、例えば象を描きたいと思っても描けない事があります。そういう時でもその場で調べる事はせずに、最後まで描き切るようにして、絵を描き終わった後で象の造型がどのようであったかを確かめます。

そうやって、分からないこと、想像できなかったことをまずは自分の想像できる範囲で描いて、後から調べるという習慣をつけていけば徐々に様々なものを描けるようになり、表現力に対する引き出しが増えますので、最低でも半年は続けることをお勧めします。ただ自己の絵に納得できない状態が長期になったときは、過去の絵に修正を加えて納得がいくまで描き続けるようにすると、従来までの即興的なスタイルから離れる事ができるので、表現形態が変わっていく可能性があり、そこから大きな一歩を踏み出せるチャンスともなるので、焦らずじっくりと取り組んでみましょう。

表現が多様化してくるに従い、さらにステップアップすることができます。それは水彩絵の具を使うことです。まずは鉛筆で下書きをしますが、あくまでも下書きなので、薄く描いておかないと絵の具を塗っても跡が残ってしまいます。ただ絵の具を使うからと言って、力む必要はありませんのでそれまでと同じように自由なスタイルで描いていけば大丈夫です。鉛筆で下書きをしたら、その下書きをなぞるように黒い絵の具を使って細筆で輪郭線のラインを引いていきます。ここで重要なのは水をあまり混ぜないようにします。水彩絵の具は使う水の量を間違えるとすぐににじんでしまいますので、注意が必要です。

ただ絵は無理をしすぎても結果的に方向性を見失ったり、思い通りの構図を描写できなかったりと、楽しみを見出せなくなることがあるので、楽しみながらやれる課題に取り組むようにしましょう。何を描くかは人それぞれ異なってはきますが、それが街並みなのか、人なのか、まずは想像する事から始めて訓練を積み重ねていった時に「これだ!」と思うものに行き当たったら比較的楽に描写できるので、常に脳をリフレッシュさせておきましょう。要するにどんな絵を描くかということを予め考えておくことも訓練うちに入るので、常に何かを想像するような習慣をつければ、いざ鉛筆を握った時でもすぐに製作にとりかかることができます。

自由表現と言うのは、むしろ人生における喜びや悲しみといった感情の放出にも繋がるので、様々な体験を通して独自の構図を見出すこともできます。

似顔絵は最も身近なところから!鏡を見て自分の顔を何度も描く

自分が興味のある人物の顔を描いてみたくなった事はないでしょうか。しかし特徴を思い出せずに断念するパターンもあるはずですし、描いてみたけど全く似ていないということもあるので、似顔絵を上達させるためには鏡を見て,普段見慣れている自分の顔を描くことをお勧めします。道具は画用紙と鉛筆があれば大丈夫です。しかし何を捕らえて描いたらいいのか分からないと思いますので、まずは目から描くといいでしょう。最初は形が崩れてもかまわないので、目、鼻、口という順番で描いていきます。それができたら、もう一度目を描き直します。これはバランスの微調整を兼ねているので、角度、大きさ、鼻や口との距離感を気にしながらここは違うと思ったところを、消しゴムで消して修正していきます。しかしこの時点では、完全な一致を目指す必要はありません。

目ができたら同じように鼻と口を修正します。そして、眉毛と顔の輪郭、髪の毛を描いて完成・・と言いたいところですが、その時点で似ていない場合にはさらに対処しなければいけないポイントがあります。それは顔の輪郭を目、鼻、口からの距離を確認して、もしズレが生じていたら正確な位置関係に合わせなくてはなりません。必要であれば髪の毛も同じようにしていきます。要するに似顔絵で重要なのは、パーツの配置のズレを微調整することなので、バランス感覚というものを身につける必要があります。

この時点でまだ似ていないと言った場合は、一端別の視点に立ってみる必要があります。別の画用紙を用意して、顔の輪郭と目・鼻・口・耳・眉毛を四角形を用いて伸ばしたり縮めたりしながら、配置していきます。そして髪の毛だけは、性格に描くようにします。この作業は、パーツの正確な位置と大きさを把握するための作業なので、実際の似顔絵は別の用紙に描く事になりますが、パーツの位置バランスを手に馴染ませるためには必要なことです。

人間の顔の特徴は遺伝子が造り上げるわけですから、それぞれ特徴が異なってきますが、顔の輪郭に関して言うと、丸いのか四角いのか三角なのかという3つのタイプに分ける事ができますので、どういう手順で描いてもうまく行かない時は単純化していくことを考えるようにしましょう。パーツも造型を単純化していくと分かりやすくなりますが目は六角形を意識して、それぞれの辺の長さを微調整していけば描きたいと思う実物の形に近づいていくので、慎重に修正することが重要です。鼻は十角形、口は五角形を意識して線を引いていきましょう。

イラストタッチのポップさを求めるのであれば、顔は円を楕円にして微調整を行い、目は小さな点で表すと楽に描けます。その場合眉毛は直線にして、角度と目からの距離を調節していくことがポイントになるので試してみましょう。鼻は楕円か四角にし、口は直線で描きます。耳と髪は多少リアルにしてもポップなイメージで仕上がるので、ここでもバランス感覚を意識して組み立てれば大丈夫です。

美術教育の指導者は似顔絵は特徴を掴むことにこだわりを持ちますが、その特徴のポイントこそバランスにあると言えますので、パーツを完璧に描けても、位置が1mmでもずれると別の顔になってしまうことも意識して、双方の距離感を保ちながら調整し、特に目は辺の角度がずれると良くないので、注意深く観察していかなければなりません。まずは自分の顔から描き始めて慣れてきたら、有名人や身の周りの人の顔に挑戦することをお勧めします。必ず目から描いて、位置関係のレイアウトが崩れないように気をつけて、うまくいったら光と影のバランスにも注意を払い、リアルな描写にもチャレンジしてみましょう。

想像だけで何を描けるのか試そう!風景画は富士山から描くべし

絵が描けないと言う人に想像で富士山を描いてくださいと言ったら、少なくとも台形を描いて青で塗りつぶすことぐらいのことはやってのけると思いますが、そういう誰でもできることをあえてやってみることこそ、自分の感覚を養うためには最高の訓練と言えます。海を描くにしても海面を斜め上空から見下ろした状態を想像で描く事は非常に困難なことですが、真横から見た海面であれば波があって波の上は雲、下は魚を一匹でも描けば、水辺の生命体がある種の動的な画面を作り出します。

想像で何かを描く事ほど難しい事はないと思うかもしれませんが、深く考える必要はありません。極端な話、描かなくても1枚の画用紙を好きな色で塗りつぶすだけでも、それは心の中の感情表現の抽出と言う意味において、際立って美しい絵画へと変貌を遂げます。オランダにモンドリアンという画家がいましたが、彼は四角形に直線だけを施しただけの絵画で世界中から絶賛されました。要するにリアルでなくていいので、好きなように線を描き、配色を施すだけで、絵は完成すると言うわけです。

とくに絵を描くことに躊躇したら、まずは好きな色が何かを知ることから始めましょう。例えば黒で紙を塗りつぶしたら、白い絵の具で自分の名前を書いてみると不思議なことに、妙な臨場感が生まれます。絵を描くのに文字?と思うかもしれませんが、これは実際にやってみると実に楽しい作業です。言うなれば文字も絵もアートと言う1つの媒体に組み込まれるということが実感できるので、黒い画面に飽きたら、青、赤、緑と順番に強調色を使って画面を塗りつぶして見ましょう。そういう作業を繰り返すことによって、自分の好きな色が分かってきますから、絵を描く前の準備段階という点では楽しく取り組む事ができるので、お勧めします。

また油絵で肖像画を描くときには、訓練が必要になりますが、人物をリアルに描く時と、想像でデフォルメした状態にしたい時ではまったく異なった方法論が存在しますので、自分がどのような方向性を目指すべきかよく吟味しなければなりません。リアルな肖像画は、遠近法と光と影などの色の調和から学ぶ必要があり、デフォルメした構図で勝負したい時は、しゅんぱつ的な脳と筆を動かす指先との呼応を鍛え上げなければならないので、表現の応用と言う意味では非常に高度な技法を積み重ねる必要があります。

では風景画はどうでしょうか。もし風景画を想像で描くとしたら、木を描くべきでしょうか、草を描くべきでしょうか。答えは4画で描ける何かを探し当てることが、バランスのとれた画面構成を担うのに適していると言えます。上記で述べた富士山を台形で描く事も重要な基礎と言えますし、草であれば細長の三角形で事足ります。木は縦長の長方形に三角形を組み合わせれば完成しますので、後は全体的なバランスを整えればいいので、ある種の単純作業が織り成す奥行きのある絵画が完成します。

これらの訓練は、子供よりもおとなが実践するべき課題と言えます。子供はおとなに比べると感覚が柔軟なので、あまり論理的な技法を施すことは、逆効果になってしまいますので、今の気持ちはどういうものであるのか、何をやっているときが楽しいのかというような質問をぶつけることによって、それを絵を描くためのビジョンとして成長を促すことを考える方が合理的と言えます。

基本的に絵を描くのが苦手だとする人達は、何を描いていい分からないから悩むわけで、ちょっと工夫してお題を出せば、脳と視覚のピントが一致して、指先に自分なりのアプローチが伝わりますから、技術的なことを考える前に感覚を養うことが重要と言えます。

バランス感覚が重要!図形に着色したりサイズの拡大・縮小を試す

windowsのPCにはスタート⇒すべてのプログラム⇒アクセサリ⇒ペイント、と進んでいくと絵を描くためのソフトが起動しますので試してみましょう。四角や丸などの単純な図形を並べて、青、赤、黄色というふうに着色を施して、プリントアウトすれば1枚の絵画が完成します。これは初歩的な訓練としては非常に楽しめるため、PCがなければ紙と色鉛筆を用意して、いかに綺麗な円や四角を描けるか、いかに均等に色をベタ塗りできるか挑戦して、最終的には、空、海、山というように簡略化した図形に近い絵を描き、ベタ塗りで鮮やかな色合いを出し、シンプルな風景画を描く事もできます。

図形はバランス感覚を養うためには非常に優れたツールと言えますので、円をつぶせば楕円になりますし、円の一部に角をつければ、扇形になり、次々と発展させる事ができます。まずは、自分の好きなように図形をたくさん描いていくことから始めれば、最終的な方向性を見出せますし、長方形の中に均等に並べた小さな四角形を描けばビルになり、同じサイズで横長の長方形を縦にくっつけるように並べて、上から順に青、水色、白という色を施せば、空と海岸と砂浜が完成します。要するに単純なものこそ1つの美学でもあり、究極の引き出しとも言う事ができます。

ところが美術教育のスタートラインは、複雑な構図の静止画を絵の具で描いたり、人物の石膏を鉛筆でスケッチするなど本格的なアカデミズムの形成が前面に押し出されて、訓練と訓練のせめぎ合いの中で脂汗を流しながら、絵を仕上げようとするので、本人独自の視点や構想と言った基本的な発想の転換に対する思考力が鈍ってしまいます。ですからまずは図形から始めて、正確な円を描くことと均等に着色するということから始めて、四角や三角を付け足していき、全体のバランスをとっていきましょう。

図形と言うのは、人に何かの構造を分かりやすく伝えるためのツールでもありますので、積極的に取り組めば自分の意思を反映した円であれば、周りをぼかすことにより精神的なイマジネーションを込める事ができ、抽象的な事柄を分かりやすいもの変えて、より伝達能力に優れた美術的ビジョンの形成に至ります。それでは人間を図形で表現するにはどうしたらいいのでしょうか。顔の輪郭や目は円形、鼻は三角、口は長方形と言うように、図形を横に伸ばしたり、縮めたりするだけで、あらゆる表現形態へと発展させる事ができるので、より高度な創造へと変化していきます。

円、四角形、三角形の三つの図形から派生する多種多様の表現と言うのは、絵画の根本的な空間形成の膨張とも言うべき新たなメタ構造の秩序を保つための重要な基礎形体といえます。立方体を遠近法を用いて表現すれば、更に進化した相対的な画面構成へ繋がりますし、単純な思考を用いて複雑な要素を造り上げるには、より高度な空間を捕らえる感覚が必要になりますが、難しいことではありません。大きな円と小さな円を描けば自ずと相対的遠近法が完成し、円の隅に小さな白い円を描けば光の反射を立体感を持って表せるので、生命力を伴ったかのような画面が生まれます。

人間の顔の輪郭を多角形で表現すると約七~九画で成り立ちます。目は六角形、鼻は九~十一角形、というように湾曲的な構造を角ばった形状に置き換えることによって、単純な思考を用いて複雑な形状を作るための、下準備がここに整うので、図形の根本的な基礎である四角形は、絵を描く上で1つの起源と考える事ができます。しかしそれだけでは何も発展しないので、角ばった形式の図になれたら、徐々に滑らかな曲線を取り入れて、自由なラインを作っていきましょう。

難しくない!絵心をテレビや映画などのエンターテイメントで養う

子供が最初に手にするおもちゃは、玩具だけでなくテレビと言う媒体を通して察知する、動的な娯楽も含まれてきますので、その中でうごめくアニメーションや子供向け番組が織り成す独特の世界は、大きな刺激となって1つのカルチャーが誕生します。また最近ではポップミュージックにおけるプロモーションビデオは、映像と音を1つの括りで人間の感覚に訴えるための要素が詰まっており、テレビの多チャンネル化に伴って、子供が目にする映像はよりバラエティー豊かになり、いち早く芸術の道が開けるという可能性は大きくなります。

例えばアメリカのニューヨークのビル街に旅客機が突っ込むという恐ろしい事件にしても、あの映像を目にした子供の視覚的思考と感情的なバランスは、良い方向に行くか悪い方向に行くか判断はつきかねますが、刺激と言う意味では絵を描くための表現力形成における要素の1つになることも有り得ます。またテレビの構造は脚本と美術製作が非常に重要な仕事になってくるので、どのチャンネルをひねってもバランス感覚、色彩感覚、角度や照明の明暗、カット割りに至るまで、映像と言えども絵が描ける専門家が基礎を作るわけですから、全てをひっくるめて1枚の絵にすると、それが赤で塗りつぶしたようなイメージになる事もあれば、デクスチャの様に粒子の集合体になったりと、1つの抽象表現が生まれます。

要するにテレビを考えると、絵を描く能力がいかに重要で現場に生かされているかがよく分かりますが、ただ番組を見るだけでなく、なぜカメラはズームアップとズームアウトを使い分けて撮影するのか、なぜ照明が必要なのか、現場の在り方を意識して観察することをお勧めします。ドラマや映画の物語はワンカットごとに時間が異なる理由や真上から人を撮影する場面があったとすると「なぜそうするの?」という疑問を持ちながらスタッフの一員になったつもりで、じっくり考えていくと必ずテレビや映画の画面から答えを見出すことができるので、それが5年かかるのか10年かかるのか人によって差はありますが、自己の訓練のためにも挑戦する事は重要です。

これは思考的創造の育成に繋がっていくので、絵画教育として非常に重要な課程といえます。ただ子供だけでなくおとなにも同じようにプラスに働いていくので、何歳で始めても大丈夫です。例えば料理番組を見ると手元で作業する映像をアップで映したり、引きで映したりする過程における、カメラワークのバランス要素や出演する人の服の色が料理と呼応していれば、それは色彩感覚における演出者の勝利となるので、話の道筋を追うのはストップして1枚の絵を見る感覚を要所要所で意識すると、今まで気がつかなかった臨場感を出すための効果や料理を美味しそうに見せるための雰囲気をビジュアル面だけで捉えるという発達した意識の元に、絵と映像という一見違った媒体に見える双方の関係性を独自の視点で見出せるようになります。

テレビや映画を見終わった後に4~5枚の絵にまとめるというような訓練をするとキーになるビジュアルを頭の中で再現させると言う高度な技量の発達に取り組む事ができます。その場合絵の良し悪しは関係ありません。抽象画のように物が変形してもいいので、事象の凝縮をしてみましょう。またそれらの訓練を通して見えてくるポップカルチャーの本質を見抜く事ができれば、表現に関するテリトリーは本格的なものになってくるので、そこから抽象画や心象風景などの独特の世界を見出すことも可能になってくるので、映像がもたらす世界はメタファーに覆われた自己の埋もれた世界観の発掘に貢献するということに気づきます。

copyright © painting-progress.com