初心者用の絵を描くための本はたくさんありますが、中級以上を目指す時に適当なテキストが見当たらないと言うことがよくあります。それは人によって描画に対する姿勢や考え方が異なってくるので、ある程度の描写力が身に付いたら自分の好きな画家の画集を参考にしてみましょう。絵を描き始めると、自ずと他人が描く絵を気にするようになるので、絵を目にする機会は多くなります。美術館に行かなくても、本屋の美術コーナーに行けば多くの画集があるので、自分の好きな画家の画集を購入して、模写をしたり技術を学んだりして、自己のビジョンを確固たるモノに変えていきましょう。

画集のいいところは一人の画家のプロットの変化や、作品を年代順に確認できるので、多面的な視野で画家の個性やテクニックを学ぶ事ができます。例えば初期の作品はアカデミックな風合いを出していても、時が経つにつれてコミカルなタッチに変わったり、色使いが明るくなったりという変化があれば、その変化に対する自分の思いを具体的に頭の中で整理することによって、絵に対する思想が広まり、客観的な視点と言うものを見出しやすくなります。

画家はバランス感覚と色使いに対するこだわりを持っているので、それらの絵の優れている点をよく分析する事が重要です。中級以上を目指すような人にとっては、1つのきっかけがあると、目的がはっきりした形となるので、他人の絵を隅々まで観察して、どんな些細な技術でもいいのでそれを自分の絵に取り入れてみましょう。まず技術や構図を模倣する事は非常に重要なことなので、一端自分の絵の中に色彩感覚や筆遣いを取り込んでみて、それができなかった時に再度画集を確認して必要な要素や、自分に足りないものは何なのか吟味してみましょう。

画集は絵に対する解説や執筆者の意見も反映されていることが多いので、自分の考えと照らし合わせてみて絵に対する考え方を再構築できます。絵というものは個人個人で意見が分かれてくるのは当然なので、解説者の考え方が必ずしも正しいとは限りませんし、自分の考えと一致しなくても人の意見を参考にすることは重要なので、否定的な考えを持たずに受け入れていくようにしましょう。ただ自分のビジョンとして確固たるモノが見つかっていれば、人の考えを気にする事無く、読み進めていけば大丈夫です。

ただ長谷川等伯やゴッホのように一貫してタッチが変わらないタイプの画家もいますので、そういう時はなぜスタイルを維持できるのか絵を1枚1枚しっかり確認しながら、自分なりの考えをまとめていきましょう。そして自分の絵を常に修正してまた新たな道が開けたら、再度自分の目指すべき道はどういうものであるか確固たるビジョンを築き上げましょう。浮世絵のようにデザインの延長上にある芸術も今は旬ですから、画集だけに留まらず建築関係の資料や前衛的な写真集を参考にするのも、新たなプロットの構築には欠かせません。

画集はあくまでも視覚的な参考に留めておけばいいので、さらなる発展を希望する場合は、美術館で実際の絵を見て画集から受ける印象との違いを比べてみる事は重要です。それらの体験を通して痛感する事は、ライブ感覚というものを肌で感じる事ができるため、実際に自分で絵を描くときの心構えとして、絵の印象を心に刻む事ができます。中には好きな絵が何か分からないでいる人もいるかもしれないので、現物を見続けることによって絵が醸し出す緊迫感や立体感を自分のインスピレーションの中に生かしていくというのも1つの手です。そして新たなる世界観が生まれれば、その時は今後の方向性をイメージングしていけばいいだけです。